(3) 台枠ボードの設計、製作

■ 台枠ボード(以下ボード)の設計

 ボードの設計に当たっては以下の点を考慮し、製作に入りました。

1.運搬時の車への積載、および保管時のスペース

 組立て式レイアウトの製作に当たってボードのサイズは非常に重要な問題です。 基本的な設計の条件を、ワゴンタイプの乗用車1台に一式積載可能なこと、 コンパクトに保管が出来ることとし、全てのボードを重ねて運搬・保管できる構造としました。 ボードの幅は、駅構内部分は上下本線・副本線およびプラットフォームを入れるため450mmとし、 それ以外の部分は線路を多少蛇行させたり、若干のシーナリーをつけるため300mmとしました。 これらの条件から天板の標準寸法は、駅構内部分のボードを900mm×450mm、直線部分のボードを 910mm×300mmとしました。曲線部分は線路の標準曲線半径を1200mmとしたので、

ボードは内側半径1080mm、外側半径1380mmの円とし、幅は300mmとしています。 その他NJのレイアウト内に収める必要から、端数調整のための幅300mmのボードが3枚あります。 駅構内の標準ボードは9枚、550mmx300mmのものが1枚、200mmx300mmのものが1枚で、 反対側の直線部分は標準ボードが9枚、660mmx300mmのものが1枚で両者とも合計直線寸法8850mmとなります。 曲線部分は半円を四等分し、1枚45度としました。ボードの総枚数は29枚となり、全てのボード、 コントローラー関係および車両がアコードワゴン一台に収納可能となりました。

2.強度・耐久性と重量の兼ね合い

 天板は、厚ければ厚いほど強度・耐久性は増し、運転時の反響音も減少しますが、 同時に重量も増加します。しかし運搬のことを考えればできるだけ軽いに越したこと はありません。今回は運搬・保管時に重ねられる構造にしたこと、組立て式でありな がらシーナリーをつけることから、ボード裏面にしっかりした梁を入れる余地があり ません。また地面や草地を固着するためのボンドの水溶液を散布したり、着色時にボ ード上で多量の水分を使用することもあり、反りを防ぐべく組立て式レイアウトとし てはやや厚めの、9mm厚のシナベニヤを採用しました。シナベニヤは通常のベニヤに比 べやや高価ですが、表面が平滑で美しいこと、また反りが少なそうなことにより採用 しました。完成後のボードの重量は、駅構内が1枚約4kg、その他の直線ボードで約3kg あり、運搬時にはかなり重さを感じますが、それほど細くない私が上に乗っても問題 ないほどの強度があります。最初に完成した駅構内のボードは製作後15年以上経過して いますが、反り等の変化は今のところ見られませんので、9mm厚シナベニヤの採用は正 解だったと思います。

3.シーナリーの高さを確保し、線路の高低差をつけながらコンパクトに納めるための構造

 ボードは全て重ねられる構造としたので、天板の長手方向にのみ強度確保・反り防 止のためにラワンの角材で側枠をつけます。側枠の高さは高いほど線路の勾配をつけ る場合高低差が取れ、またより高さのあるシーナリーやストラクチャーを置けること になりますが、運搬・保管時により大きなスペースが必要になります。まず、 (1)駅構内は線路の高低差がなく、プラットフォーム以外の建物や構造物を取外し式 にすればあまり高さは必要ありませんので、ボードの裏側のポイントマシン取付けや 電気配線を考慮に入れて、側枠の高さを30mmとし、天板上面の高さは30mm+9mmで39mm となっています。 (2)曲線部分は線路に勾配をつけるため、駅構内部分の線路との高 低差を最大24mm(天板面からレール上面までの高さは最大30mm)とし、側枠高さは駅 構内と同じく30mm、天板上面の高さも同じく30mm+9mmで39mmとなっています。 (3)エンドレス反対側の直線部分は、線路自体を築堤として持ち上げるとともに多少 高さのあるシーナリーをつけるため、側枠の高さを45mmとし、天板上面の高さは45mm+ 9mmで54mmとなっています。その結果、駅構内部分の線路との高低差を最大53mm取るこ とができました。側枠の厚さは全て14mmです。運搬時及び保管時の保護のため、駅構内 部分、曲線部分、その他の直線部分の最上部にそれぞれ同サイズのシナベニヤでカバー をつけました。  その結果、各ブロック毎にボードを重ねた高さは(1)駅構内部分が405mm ([側枠30mm+天板9mm]x9枚 + カバー側枠45mm + カバー天板9mm)、 (2)曲線部分は351mm([側枠30mm+天板9mm] x 9枚(カバー込み)、 (3)反対側の直線部分は630mm([側枠45mm+天板9mm]x9枚 + カバー側枠90mm + カバー天板9mm + ボード1枚のみ高さを稼ぐためのスペーサー側枠45mm) となりました。ご覧の通り、組立て・運転時の大きさ(最大寸法11610mm×2820mm) の割にはコンパクトなサイズとなりました。

駅構内のボード


駅の反対側の直線ボード


カーブと端数調整用のボード


4.鉄橋部分のボード


 鉄橋部分を含むボードだけは、川が他の地形部分より低くなり、さらに川を見せ るために長手方向に亘る側枠をつけない構造としたので他のボードと構造が異なり ます。強度を補うために底面の部分を15mm厚のシナベニヤとし、川の前後の築堤部 分のみ高さ30mmの側枠をつけ、その上に他の部分と同様の9mm厚の天板を貼った2重 構造とし、その上面の高さを54mmとして前後のボードの高さに合わせました。この 特殊な構造のため、運搬・保管時に他のボードと重ねる場合の位置は当然一番下と なります。


5.ボード同士の組立て、接合、電気接続の問題

 運転会で組立て・解体を繰り返す組立て式レイアウトでは、如何に短時間に組立てが出来るかが 重要な問題となります。また正確なボード同士の接合が必要です。そこで、ボード同士の接合部は 上下・左右の位置決めが簡単且つ正確に行えるよう、次のような構造としました。
(1)駅構内のボードは、まず、天板に対して側枠を長手方向に10mmずつずらし、ボードの天板が 隣のボードの側枠に10mm載るようにします。次に天板が側枠より10mm出ている側の、天板裏側に 天板より更に10mm出るように横方向全体に亘る高さ14mm×幅30mmの角材を取付けます。この角材は ボードの横方向の反りを防ぐ目的も兼ねています。その角材の先端が隣のボードの側枠の内側、 天板の下側にきっちり入るようにします。
(2)曲線部分および駅と反対側の直線部分のボードも 基本的には同じ構造ですが、横方向全体に亘る高さ14mm×幅30mmの角材の代わりに天板と側枠の 交点内側から10mm角の角材を天板より更に10mm出し、その先が隣のボードの側枠の内側、天板の 下側にきっちり入るようにします。これでボード同士を簡単且つかなり正確に接合することが可 能になりました。

更に駅構内部分のボードでは、ボード間のポイントマシンやフィーダーの電気配線の接続を ボードの接合と同時に行えるようにするため、天板下部に15p、25pのコネクターを固定し、 組立て時の配線の簡素化を図りました。接合部は実は単純な構造なのですが、文章での説明 ではわかりにくいと思いますので写真をご参照ください。

■ ボードの製作

 天板のシナベニヤ、側枠の角材等はDIY店で購入しました。購入時には反りやねじれがな いか十分にチェックし、妥協しないことが大切だと思います。気に入ったものが必要数揃 わない場合は次回入荷時まで根気強く待ちました。また市販の角材は意外と寸法が不正確 なことが多いので注意が必要です。余談ですがシナベニヤは定尺物にもかかわらず、当初 駅構内部分の製作時は長さが900mm、ところが13年後にその他の直線部分を作った時は910mm でした。天板と側枠は前述の通り長手方向に10mmずつずらし、直角に注意しながら下穴を開 けた上、木ねじで組立てます。将来固定レイアウトに転用することも考え、接着剤は併用し ていません。ボード同士の接合部の工作は現物合わせでできるだけ隣のボードときつからず、 ゆるからず接合できるよう調整します。曲線部分は、木材で曲線の側枠を作ることが困難だ と思われましたので、当初八角形で作ることも考えましたが、幸い兄の知合いの家具屋さん が製作を引き受けてくれることになり、時間に余裕がなかったこともあって思い切って依頼 しました。勿論、製作費は結構掛かりますが、出来上がりは素人にはまねのできないもので した。各ボードは完成後、重ねたときに横方向にずれないよう、ボード天板の長手方向の端 から14mmのところに4mm角の角材を貼りました。以上でボードは完成しましたが、接合部を全 て同じ構造としたので、レイアウトの組み立て時、エンドレスの最後の一枚のボードを入れる 時にやや「こつ」が要ります。
(2004年11月 M.F)